連携研究センター

補完薬用資源学研究室

高知県の誇る多様な植物遺伝資源の真の価値を明らかにし、持続的な植物活用の道を拓く

高知県はわが国に自生する6,000種のうち半数以上の3,170種が存在する植物の宝庫であり、そのうち350種ほどが有用植物(衣・食・住及び薬用)と見込まれているが、そのほとんどは未開拓である。一方、県内各地には植物利用に関する伝統的な知恵の体系がまだかろうじて残っている。それらを掘り起こしサイエンスの光を当てることで新たな地域活性化の可能性を広げる。


高知県植物資源調査の集大成

 2010(平成22)年度に研究室を開設して以来、5年間で約1億円の外部資金を得て、高知県の有用植物資源について調査研究を行ってきました。2010(平成22)-2012(平成24)年度、総務省SCOPEの採択を得て、地理情報システムと植物データベースとを組み合わせたLUPINES(Local Useful Plants with Intelligent Network of Exploring Surface)地域資源活用プラットフォームを開発・実装し、WEB上1に公開しています。また、2011(平成23)-2013(平成25)年度、県内3大学と企業の共同研究として、県内の未利用有用植物約350種について薬理活性スクリーニングなどの評価を行い、医薬品、健康食品、化粧品素材などの産業応用に向けた優先順位づけを試みました。
 2012(平成24)年度からはLUPINESを活用し、「救荒植物(災害時食糧として江戸中期に普及)の栽培適地評価システム」(高木方隆・SCOPE)の共同研究により自生環境の評価や栽培適地選定の方法論を開発し、有望種の薬理活性と、微気象・微地形等の環境要因との関係性についての分析研究も継続しています。
 2013(平成25)年度から「地理情報システム利用によるレアプランツのインベントリーと有用性・安全性の評価」{科研費A}により、これまでフィールドとしてきたネパール、ミャンマー、ソロモン諸島、台湾、カンボジアなどの植物調査をLUPINES上に統合することを目指しています。
 2014(平成26)年度から「新アグロフォレストリーのための森林・有用植物資源の賦存量の評価・予測モデルの構築」{高木方隆・科研費B}により、低高度空撮立体画像データによる森林バイオマスおよび有用資源植物の賦存量の精密な評価・予測モデル化を進めました。2017(平成29)年度からは、間伐材・林地残材をフル活用したバイオマス研究と用材生産との両立、さらに伐採後林床における和漢薬原料植物や高付加価値有用植物の栽培適地輪作とを加味した、環境理工学群の研究室との共同研究を進める中で、新たなアグロフォレストリーを目指しています。

※1:http://www.lupines.net

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 今後の展開

 これまでの研究の集大成として有用種354種を選抜し用途や効能などの解説を加えた「高知県有用植物ガイドブック」を刊行しました{高知工科大学編、高知新聞総合印刷、2016(平成28)年12月}。本ガイドブックに収録された有望種について、今後は産業化への展開をにらみつつ、大手企業及び県内企業との商品事業化モデルを模索します。
 また、身近な植物の伝統的活用法を掘り起こすとともに、あらたな産業活用の可能性を探るため、2013(平成25)年度にスタートした地域連携機構の冠イベント「食のキャラバン」をプラットフォームにした人材育成事業を継続(高知県内1箇所、東京都内及び岡山県内ではFood Caravanと称し、年3回程を予定)します。
 研究成果を地域づくりにも活かすため、香美市土佐山田町佐岡地区と香南市香我美町西川地区を環境理工学群の生物環境データサイエンスの授業の実践フィールドとして、有用植物を活用した地域ブランドの開発や、観光拠点整備などの試行を継続します。
 2016(平成28)年度からは、研究室で開発し、データを構築してきたLUPINESの実践活用の事例として、高知工科大キャンパスの植物園化構想を進めてきました。今年度からは本学近隣の公園や大阪府日本万国博覧会記念公園に向け研究員らとともに植物案内パネルの設置も進めています。

 研究室長から

これまで人と植物の関わり、自然との調和をテーマにして学問に携わってきました。植物のもつ未知の力で世界を変えたいという気持から、国際プロジェクトに取り組み始め30年が過ぎました。高知県に活動拠点を移してからは、有用植物が持つ様々な機能を活かし、人間の暮らしに安全・安心を与え、そして美味で健康に役立てるため、植物のインベントリー調査に取り組んできました。私たちが生きていく21世紀の世界では、植物資源をめぐる農工医連携の科学や教育はますます重要性を増していきます。さらに地域に根ざし、地域に役に立てる大学のあり方も問われています。その先駆的なモデルとなるようさらなる取り組みを進めます。2016年から在来品種に関する研究を四国でもスタートしているので大学院生で興味のある方を募集中です{渡邊高志・科研費挑戦的萌芽研究2016(平成28)~2018(平成30)年度}。

関連プロジェクト

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