バイオカーボン開発研究室

【室長 坂輪光弘教授 坂輪教授退任により平成22年度末をもって終了】

高知県特産の木質系資源の有効活用を図り、地域の活性化に貢献する

高知の豊富な森林は、環境面はもとより、炭素循環型の木質資源の供給源としても大きな価値を持っている。樹皮や、おが屑なども、固めて炭化することにより利用可能な資源に生まれ変わる。炭化することで木質素材に付加価値をつけた新材料を「バイオカーボン」と名づけ、その多様な用途開発を通して地域発の事業創出をめざす。

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坂輪教授(左)と篠田助手

■研究室長 坂輪光弘 教授/工学博士
前職・・・物質・環境システム工学科長、元・新日本製鉄研究審議役
専門分野・・・炭素材料、石炭、コークス、資源・エネルギー

■助手 篠田雄一

バイオカーボンの話

研究・活動実績(プロジェクト例)

■「古紙と未利用木質資源から造った炭の植物栽培床と環境資材の開発」
(科学技術振興機構 平成20年~平成22年度 育成研究)

炭だけを用いた植物栽培床は、軽量かつ無菌でさらにホルムアルデヒドの吸着能を有し、土のように処分に困ることもない。そのため農業用の苗床としての利用はもとより、都市部での観賞用植物栽培に適し、ベランダや屋上植栽によるヒートアイランド対策にも有効と考えられる。本研究では、これまでに申請者らが開発した古紙による炭の鉢を発展させ、地域の木質系未利用資源である木屑、樹皮などを混合し、安価で機能性の高い植物栽培床の開発をめざしている。

■[高知県産の木質資源を用いた鋳物用加炭材の研究開発]
(経済産業省、地域資源活用型研究開発事業、平成19年~平成20年)

現在、鉄系素材の機械的特性向上にとって最も重要な添加元素である炭素は、石炭から造られたコークスを加炭材として鉄の溶解時に加えられている。しかし、化石資源の有効利用、CO2削減などの面で、コークスを加炭材として用いることには問題がある。また近年、石炭価格は高騰しており、石炭に代わる加炭材の市場ニーズも高まりつつある。そこで我々は、平成16~17年にかけ、農業・生物系特定産業技術機構の研究成果として開発した木質系資源から安価に大量に炭を製造する技術を用いて、製造した炭を鋳物用加炭材に利用する研究を進めている。

■「鋳造廃棄物の省エネ型溶融によるリサイクルシステムの実用化研究」
(経済産業省、平成13年度即効型地域新生コンソーシアム研究開発事業)
■「おが屑から高密度炭の製造と溶融型ごみ処理炉への利用研究」
(平成16年~平成18年、農林水産省、農業・生物系特定産業支援機構)
■「古紙から造った炭の栽培床の研究」
(平成12年、NEDO地域新生コンソーシアム)

研究室長から

私は、高知工科大学に赴任して最初の大学祭で、「製鉄会社から来たのだから”たたら製鉄”を実演してほしい」と要請されました。いくら製鉄会社にいたとは言え、”たたら”は初めての経験。多くの人に助けられ、何とか成功裏に実演を終えましたが、その時、製鉄には大量の木炭が必要だということを実感したのです。
“たたら製鉄”に使う炭を焼くために、高知県立森林技術センターには従来型の炭焼き窯を造っていただきました。後に、この窯を使って、「親子炭焼き大会」を何度か開催しました。炭焼き名人に来ていただき、学生たちも加わり、一晩中火を燃やし、一週間後に炭を取り出します。形のいい炭は参加者たちも喜んでもって帰りますが、後には粉状の炭が大量に残ります。「炭は、畑にまくとよい」とか「家畜の脱臭剤になる」という話を聞きましたが、農家の方に話してみると「うちまで持ってきてくれるなら引き取ってもいいが、お金を出してまで買う人はいません」とのこと。そこで、何とか付加価値のある炭を作れないものか、と考えたのが「バイオカーボン」開発の発端です。
植物の栽培床への利用、鋳物用加炭材への利用など、誰も手をつけていないフロンティア領域の研究で、高知発の新技術を世界に発信していきたいと思っています。