連携研究センター

地域交通医学・社会脳研究室

健常脳のビックデータから健康寿命と運転寿命の同時延伸を目指す

脳ドックという日本独自の予防医学から創出される健常脳のビックデータから「交通脳データベース」という新たな概念を提起し、健康長寿と運転寿命を共に延ばして、超高齢社会を活性化する。


高齢者のドライバー属性には脳情報が必須

 高齢者が生き生きと暮らせる社会では、自由にどこでも移動できるモビリティ(車の運転)の維持・確保が不可欠です。しかし、現状は高速道路での逆走など危険運転による高齢ドライバーの死亡事故が多発しています。この事態に免許証返納という対応だけでは、高齢者の生活基盤や活力を殺ぎ、社会の停滞に繋がる危険性があります。高齢者が安全に長く運転し続けられる社会の実現には、免許症返納だけではなく高齢者講習のあり方も含めた新たな運転免許制度の構築が喫緊の課題です。ヒトの高齢化には個人差が大きく、新制度構築にあたっては、個人差をどう扱うかが鍵となります。我々は、高齢者に頻発する危険運転や悲惨な事故は、脳の個人差が安全運転能力に影響を及ぼした結果であると考えます(図1)。脳の個人差が、自動運転下で必要とされる咄嗟の危険場面での安全運転にも大きく影響するものと考えています。
 そして、10,000件を超える脳ドックのMRIデータから、世界最大級となる交通事故歴・運転適性検査データ等とリンクした交通脳データベース(DB)を構築し、白質病変マッピングと脳部位容積パターン(図2)が交通事故タイプと関連する脳内因子であることを見出しました。さらに、脳機能データを加味することでより一層精度が高い交通脳DBを構築中です。

 

 

MRI検査を導入した新規の高齢者講習を提言

 準高齢者になる65歳から身体能力や認知機能の低下が顕著になり始めるため、高齢者講習を65歳に前倒しするよう提案します。身体・認知機能チェックと脳MRI検査を同時試行して構築した交通脳DBを基に、脳の個人差に応じた用途別・地域別等の個人対応型運転免許制度導入を提案します。必要ならば医療機関にも紹介して、健康維持にも貢献する高齢者講習・免許制度への改革を促します。現行の高齢者講習は3年毎に施行されていますが、多発する高齢ドライバーの危険運転に対応するためには、毎年施行されてしかるべきでしょう。高齢者講習で毎年脳ドックを行うことによる社会的・個人的負担は、健康寿命と運転寿命の延伸を共に達成できるメリットで十分解消できると考えられます。
 こうした提案に沿って脳医学と交通を融合し、高齢者が安全に長寿運転できる車社会の実現を目指します。

 

 研究室長から

若くても脳組織がダメージを受けており、白質病変や脳萎縮が頻繁に認められます。年齢に関わらずできるだけ早い時期に、脳ドックを受けることをお薦めします。脳を知れば、人生が変わります!

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