人材育成:黒潮町ワークショップ「地域におけるICT活用」

黒潮町ワークショップ:第1回

日 時:2010年10月15日(金) 13:40~17:30

場 所:黒潮町役場佐賀支所3階会議室

 

[プログラム]

13:40  開会あいさつとメンバー紹介

13:50  講演:地域活性化のためのロジックモデルによるICT施策の設計
高知工科大学地域連携機構・地域情報化サイクル研究室長・菊池豊教授

14:30  講演:地域活性化のための地域映像制作、地域映像企画の発表
メディアラグ株式会社・藤井雅俊社長

15:30  参加者討議:地域映像企画の検討

 

地域の活性化のためには、地域情報を自ら発信できる主体の形成がひとつの鍵となります。そのためには、自治体職員や地域住民が映像やホームページを通じて情報を表現できるスキルを身につけることが当面の課題となりますが、より根本的には、地域の抱える課題の構造を深く考え、何が価値のある情報であるかを見極める力を持った人材の育成が必要です。
黒潮町ワークショップでは「地域におけるICT活用」をテーマに、映像コンテンツなどの実際の制作を通して地域の課題を考えることとしました。
第一回の参加者は、黒潮町副町長以下行政関係4名、地元NPO砂浜美術館の住民ディレクター等4名、NTT、セコム等企業関係者、工科大関係者など、総計18名でした。

高知工科大学地域連携機構・菊池豊教授の講演

高知工科大学地域連携機構・菊池豊教授の講演

最初に、高知工科大で地域の情報化に長年携わってきた菊池教授から、iPADなどの登場によって情報通信の道具が急速に進化しつつあることが紹介されました。かつて1968年にダイナブックの構想を提案したアラン・ケイの夢がいまや現実となったのです。地域情報の表現の仕方も当然大きく変わっていかなければなりません。
さらに菊池教授は、地域の課題を解くためのロジックモデルの手法について、トンネル内歩行者の安全対策の実施例をもとに解説しました。歩行者やドライバーがトンネルに対して感じる不安や不快などの様々な意見の連鎖関係を網の目のように図に描いて、多くの矢印が集中する項目をつまみあげると課題の因果連鎖のツリー構造が見えてきます。この手法は、地域の課題の構造を可視化して、問題意識を共有する上で、誰でもが取り組めるとても有効な方法といえます。

メディアラグ株式会社・藤井雅俊社長の講演

メディアラグ株式会社・藤井雅俊社長の講演

地域映像の制作をめぐっては、映像プロデューサーとして著名な藤井雅俊氏を招き、まず、ここ5年のうちに大きく変わるであろう映像コンテンツの近未来図について講演をいただきました。すなわち、テレビ放送、オンデマンド・ビデオ配信、WEBブラウザーの境界が全くなくなり、それに応じてコンテンツの作り方も出口に対応した多面性が要求されるようになるということです。地域が自らオリジナルなコンテンツを生み出し、発信することの意味もますます大きくなっていくといえます。

ワークショップでは藤井氏がモデレータとなって、TVカメラとモニターを使いながら、映像表現に取り組みました。藤井氏が出したお題は、机の上に置いた缶コーヒーを哀しく表現せよというもの。参加者はそれぞれにアングル、配置などの意図を語りながら撮影を試み、その意味づけを藤井氏が白板に書き込みながら展開し、最後にはストーリーを踏まえた15秒コマーシャルにまで肉付けが行われました。ここで藤井氏が強調したのは、なにげなく映っているという映像ではなく、いかなる意図で映したかという「コンテクスト」ということ。ごく短時間で、映像文法論のエッセンスを教授いただいたといってもいいでしょう。
藤井氏からは、黒潮町を描くには、黒潮町に何があるかを知らねばならない、それをみんなで見つけ出すことが次回までの宿題、ということでワークショップは終了しました。

藤井社長による実践ワークショップ

藤井社長による実践ワークショップ

黒潮町ワークショップ:第2回

日 時:2010年11月11日(木) 13:40~17:20

場 所:黒潮町役場大方庁舎第2会議室

 

[プログラム]

13:40  開会あいさつとメンバー紹介

13:50  講演:地域ファンドによる地域ビジネス
NPO法人高知企業支援センター・吉井法宏氏

14:50  講演:ウェブ戦略の立案と事例
株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ四国支社高知支店・山本和明氏

16:10  参加者討議:ウェブ戦略の検討

 

今回のワークショップでは、地域からの情報発信能力を高める前提として、そもそも何をもとめて誰のために情報発信をしたいのかという根本命題に立ち戻って、講演と参加者による討論が行われました。参加者は、前回同様、黒潮町行政関係3名、砂浜美術館の住民ディレクター等4名、NTT、セコム等企業関係者、工科大関係者など、総計15名でした。

最初の吉井氏の講演では、自身のNPOとしての活動体験を踏まえての、地域ビジネスに関する提案が行われました。ここでいう地域ビジネスとは、当然ながら地域固有の資源を活かした商品開発や観光などのビジネスを意味しますが、とかく地元にあっては何がその地域の魅力であるのかが見えなくなりがちです。そこで、外部の一流の目利きによって地域の価値を評価してもらうこと、あるいは、国内はもとより海外の優れた事例から体験的に学ぶことの重要性が指摘されました。
さらにNPO的なアプローチで地域事業を立ち上げる場合、ファンド・レイズが重要となりますが、不況の時代にあっては資金の調達だけにこだわるのではなく、企業などからの設備・機材あるいは商品などの供与や、さらには役務提供なども幅広く「ファンド」ととらえ、調達を図ることが必要とのことでした。

砂浜を美術館に見立てたTシャツアート展

砂浜を美術館に見立てたTシャツアート展

続くドコモの山本氏の講演では、これからのモバイル事業のトレンドと、自治体などのウェブ製作でありがちな失敗などを具体的に解説していただきました。トレンドについては、ドコモが製作した近未来モバイル通信のイメージDVDが紹介されましたが、世界中の人と3D、バーチャルリアリティやクラウドコンピューティングを介した同時通訳などで結ばれ、あたかも隣にいて対話しているような構図は、たしかにさほど遠い未来の話ではないように思われます。
後半では、ウェブ製作を請け負ってきた体験から、マーケティング理論でいう「ペルソナ」、すなわち仮想顧客の設定からしっかり取り組まねばならないとの指摘がありました。とかく自治体のホームページなどでは、あれもこれもと欲張った結果、誰に向けて何を伝えたいのか分からなくなっているものが多々あります。的を絞らずに成功した例は過去にひとつもないとのことでした。
モバイル環境もどんどん変化していく中で、どのような顧客のいかなる購買行動に影響を与えるかというWEB戦略は、ますます重要になるといえそうです。

地域ビジネスの可能性を語る吉井氏

地域ビジネスの可能性を語る吉井氏

最後に、高知工科大の岡村助教の進行で、WEB戦略をめぐるロジックモデルを参加者みんなで検討しました。例えばホームページで観光をアピールするということひとつ取り上げても、誰を呼びたいのか、何を見てもらいたいのか、どう楽しんでもらいたいのか、それすら定まらないということがすぐに明らかになります。そもそも観光で人が集まれば地域は活性化するという図式自体が、もうかるのは誰かという突っ込みを入れていくと、ゆらいできます。今回は、WEB戦略の検討は一筋縄ではいかないことを確認して、次回に課題を残すこととなりました。

WEB戦略について説明する山本氏

WEB戦略について説明する山本氏

黒潮町ワークショップ:第3回

日 時:2010年11月29日(月) 14:00~17:00

場 所:黒潮町役場会議室

 

[プログラム]

14:00  あいさつ

14:10  話題提供 高知工科大学・岡村健志助教

14:30  地域映像テーマの検討(メディアラグ株式会社・藤井雅俊社長)

 

第一回目の藤井社長を再び講師に招き、映像コンテンツ制作の前段として、誰に何を伝えるかという論理構築の仕方を学習しました。今回は、いつものメンバーに加えて黒潮町の大西勝也町長と、地域連携機構・地域連携センター長の中田愼介教授も参加し、総計16名でした。

最初に、地域連携機構の岡村助教から話題提供として、オーストリアのギュッシングという小さな市のエネルギー革命の事例が紹介されました。ここは20年前には貧しい地域でしたが、太陽光・熱や、バイオマスなどによる自然エネルギー化を推進したことにより、、地域内の電力、熱、ガスなどのエネルギーは全て自給可能となり、モデル地域として多くの企業や研究所が集積し、雇用も生まれ豊かな村へと変貌しました。要するに、地域の発展に一番大事なことはビジョンを描くということなのです。

ギュッシングモデルを説明する岡村助教

ギュッシングモデルを説明する岡村助教

藤井氏の講演では、まず前回の要約として、映像コンテンツの目指すところは、見る側の五感に訴え、なんらかの行動–たとえば何かを買うとか、観光地に出かけるとか–を起こさせることにあるということが確認されました。今はインターネットのおかげでユーザーはいくらでも他との比較ができるため、よほど惹かれる何かがなければ行動を起こすには至らない。つまり、単にきれいな映像というのは見るだけで終わってしまうということです。ところが多くのサイトはきれいに見せるところに止まっていて、行動を起こさせるという論理が組み込まれていないのです。
逆に、その地域の財産が何かということを明確に理解し、それをプロデュースできる人材が発注する側にいれば映像コンテンツは際立ったものになります。その際には、地域財産をストーリーとしてとらえることが重要となってきます。

映像論理を語る藤井氏

映像論理を語る藤井氏

そこで、あらためて地域財産と思われるものを白板に書き出し、その内容を皆で検討してみました。ここで藤井氏が指摘したのは、「塩」ひとつとりあげても、それが他とどう異なるのか言葉にすることだということです。それがナレーションに繋がります。たとえばもし「黒潮町の塩は海がきれいだから味も違う」と語れるとすれば、商品としての塩のイメージの描き方は大きく膨らますことができます。そこからさらに、言葉にできるものは「地域商標」として登録すれば、海外輸出も見据えて先行者利益をとれるという、極めて具体的な戦術も示唆されました。

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藤井氏の後半の講演では、情報化の急速な進展に対応したビジネスモデル構築の必要性と、それに合わせた映像コンテンツ制作の論理について解説いただきました。
デジタルコンテンツにGPS位置情報が連動するようになったことで、店の評判がそのまま地図に固定されるという状況が生まれつつあります。また、電気自動車の拡大によって、充電のできる行楽地というコンセプトが登場しました。情報端末はもはやITというより家電のような日常的なものとなり、中学1年生がターゲット年齢となりました。画像検索という新しい情報探索のアプローチが有効になってきました。
このような変化を先取りするためにも、地域財産というものをあらためて洗い出して言語化し、それらの連関構造を論理として把握するという基礎作業を急ぐ必要があります。
それには、行政も農・商・工・観光が連携し、さらに住民や大学も一体となって取り組まねばならないということです。

藤井氏の話に耳を傾ける大西町長

藤井氏の話に耳を傾ける大西町長

黒潮町ワークショップ:第4回

日 時:2010年12月17日(金) 13:40~16:40

場 所:黒潮町役場会議室

 

[プログラム]

13:40  WEB戦略の検討2
株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ高知支店 山本和明氏

 

今回は株式会社NTTドコモ高知支店の山本さんを再び講師に招き、ウェブの発注管理に必要なノウハウを学びました。前回の講義では、「ペルソナ」を使ったウェブ戦略の立案方法について学びましが、今回は、黒潮町の役場職員と住民ディレクターの6人が、2人づつ3チームに分かれて、ペルソナを実践しました。

まず、各チームは2人でこれから作成しようとするウェブのテーマについて話し合いました。テーマ一つを決めるのもなかなか議論が白熱します。その結果、A班は「カツオと俳句を楽しむ」、B班は「カツオのワラ焼き体験」、C班は「シーカヤック」についてウェブ戦略を作成することとなりました。
その後一人づつ、テーマに対して「誰に発信するか」「発信相手はどんな生活をおくっているか」「どんな欲求を持っているか」など考えた後、再びチーム内で議論を行いました。その結果、ウェブを発信する相手の絞り込みやその具体的な属性、ニーズなどが明らかになりました。さらに、その結果を踏まえて、ウェブに必要となる機能や、比較のためにベンチマークとしたいウェブについて検討しました。

テーマのひとつ、カツオのワラ焼き体験

テーマのひとつ、カツオのワラ焼き体験

さて、これより各チームからの結果発表です。各チームからは数時間にわたり考えられたウェブ戦略が発表されます。発表内容はターゲットの生活様式、日々の欲求、ウェブの機能など、実に具体的なものばかりでした。中にはバイクでツーリングする人たちは情緒的であるとか、バイクで観光に来た場合は、盗難防止のために宿泊施設の駐輪場の場所や配置を気にするだろうなど、日常生活ではあまり発想しないことまで話し合われていました。
山本講師は、ここで「なぜそのテーマなのか」「なぜそのセグメントなのか」「なぜその機能なのか」など常に各チームにその理由を問い続けます。ただのアイディアだったのか、それとも何かの理由に基づいて考えられたウェブなのか?ときに、山本講師の問いかけに対して、苦笑いで答えが返されます。軸がぶれてはユーザに伝わりません。ウェブの発注においても企画者の意図が読めなければコンテンツの制作はできないのです。各チームは常になぜ?を考え続ける時間でした。
次回のウェブ戦略講義では、実際のウェブ発注を通じて立案したウェブ戦略の緻密さを振り返ります。

ウェブの発注管理について説明する山本氏

ウェブの発注管理について説明する山本氏

ふと、15年ほど前に研究室で教授にしつこく理由を考え続けろと言われたことを思い出しました。自分の仕事を振り返ると、日常の仕事では、理由について深く考えることをずいぶんと置き去りにしてきたのかもしれません。理由より答えを書く方が簡単でした。

ペルソナについて検討するメンバー

ペルソナについて検討するメンバー

黒潮町ワークショップ:第5回

日 時:2010年12月22日(水) 15:00~17:00

場 所:黒潮町役場会議室/大手町NICT (TV会議)

 

[プログラム]

15:00  地域映像テーマの検討2
メディアラグ株式会社代表取締役社長 藤井雅俊氏

 

第三回目でテーマとなった地域の財産に関する言語化について黒潮町メンバーから提出された宿題の答えを元に、藤井講師からの指導でそこからさらに一歩進めたコンセプト図化と絵コンテ作成までのプロセスを学びました。黒潮町メンバーは役場の会議室に集まり、講師の藤井氏は東京・大手町の会議室を借りてのTV会議システムによる遠隔講習です。

最初に、藤井氏はメンバーがまとめたA4判4ページにわたるメモの中から、象徴的な単語や文章にアンダーラインを引き、その背景や理由について次々とツッコミを入れました。例えば、「砂浜はフカフカと軟らかくとても優しい感覚を受ける」、「産卵場として絶滅危惧種のアカウミガメが安心してやってくる」という記述に対し、そのフカフカと言える根拠は何か、もし単なる主観以上に他との比較を意図するのであれば根拠を調べなければならない。また、優しい感覚を受けるのは誰か、それを映像として描くにはどのようなカットが望ましいか。ウミガメの安心はいったいどのように表現するのか。あるいは「車の乗り入れを制限し、浜辺を自然の状態に守る」という記述に対しては、制限を行っているのは県か町か。具体的な条例などあるのか。守ることに取り組んでいる主体は誰か、いつからか、どういう背景があってか、などなどです。

らっきょうの花畑と潮風のキルト展

らっきょうの花畑と潮風のキルト展

ここで指摘されたのは、第一に、表現することに責任を持つためにはありとあらゆる裏付けを調べ尽くさなければならないということです。わずか数行の記述の中から、調べるべきことが次々と出てきて、メンバーも裏付け調査の大変さを実感しはじめたようです。第二の指摘は、「フカフカの砂」というような言語表現をどのような映像に置き換えるかを考えるねばならない、それが絵コンテ作成の意味だということです。メンバーのこれまでの作品づくりでは絵コンテまでは考えられていなかったようです。

さらに藤井氏は、最終的な作品の遡及対象を国内とするのか、海外までもターゲットにするのかを問いました。メンバーの意気込みは海外に向けても発信を、ということです。
そこで、討論の中から出てきたひとつのアイディアが、黒潮を”Kuroshio Current”ととらえ、これに絡めてKuroshio Townの認知度を上げていこうということです。”Tsunami”は国際用語として既に広く認知されていますが、同様にKuroshio Current も英語としても十分通用します。来年、ハワイで予定されているTシャツアート展も、”Kuroshio T-shirts Art Gallary”という名でアピールしてはどうかということになりました。
メンバーが作成した宿題メモの中に、「マリンスポーツを目的とした観光客に人気が高く、将来的にプラグイン電気自動車が一般化された際に、高知西南地域の充電の拠点として位置づける」という記述がありました。これは前回の藤井氏の講演に触発されたものです。藤井氏はこれを一歩進めて、高知西南地域をスマートグリッドタウンに変えて行こうというメッセージを込めて、”Smart Town Kuroshio”を提案し、一同、これで行こうという合意に達しました。

国の名勝指定を受けた松原

国の名勝指定を受けた松原

今回は、絵コンテの作成までの時間はなかったので、次回までの宿題となりました。藤井氏からのアドバイスは、海外へのアピールを想定して、絵コンテはナレーションなしでも絵のつながりだけでストーリーが分かるよう考えてみて下さいということです。かなり、作業のハードルは高くなってきましたが、徐々に作品に近づきつつあるようです。

大手町の会議室から講義を行う藤井氏

大手町の会議室から講義を行う藤井氏

黒潮町ワークショップ:第6回

日 時:2011年1月20日(木) 13:40~17:00

場 所:黒潮町ビオスおおがた情報館内 砂浜美術館会議室

 

[プログラム]

13:40  地域の植物資源について
高知工科大学地域連携機構 渡邊高志准教授

14:50  地域映像制作
メディアラグ株式会社代表取締役社長 藤井雅俊氏

 

前回までの会合で、黒潮町の海岸に面したらっきょうの花畑と大粒の特産品らっきょうについてしばしば話題になっていました。曰く、もし他の地域のらっきょうと異なる性質などが明確にできればブランド戦略に組み込むことも可能になるのではないかということです。
そこで、昨年末に工科大の補完薬用資源学研究室の渡邊先生に花の部分の成分分析をお願いしていましたが、その結果報告も兼ねて植物資源活用の話を最初にしていただきました。

会場となったビオスおおがた情報館(左)、右は物産館

会場となったビオスおおがた情報館(左)、右は物産館

渡邊先生は牧野植物園から工科大に出向し、県内の有用資源植物の活用について取り組んでいます。(梼原町ワークショップも参照ください)
今回の分析では、黒潮町のメンバーが12月のはじめに1Kgも集めてきた花を乾燥させ、エタノールによって抽出した溶液を液体クロマトグラフィーにかけて、主成分を特定しました。その結果、抗酸化作用をもつアリインや、色素成分であるフラボノイドなどが検出されましたが、特段すぐれた値ではなかったとのことです。毒性をもつアルカロイドは検出されませんでした。ただし、黒潮町のらっきょうはアマミラッキョウと呼ばれるもので、分布域も限定され、4倍体(染色体が通常の2倍)であるため、粒も大きくなるという特徴があるので、地域の特産として大事にしていくのが良いとのアドバイスでした。
このほかに渡邊先生からは植物の様々な機能性や、それを活かした薬品や化粧品などがいかに身の回りに多いか、そして高知県は植物資源の宝庫であることなどが紹介されました。

植物資源について説明する渡邊先生(左)

植物資源について説明する渡邊先生(左)

続いて、前回宿題となった黒潮町プロモーション作品の絵コンテがチーム全員の共同作業の成果として披露されました。40シーンにわたり手描きのイメージと、解説が加えられたなかなかの大作です。藤井講師からは、まず全体の構成については合格点をいただきました。そこで一同気を良くしたところで、ひとつひとつのシーンについて、ここはいつどうやって撮影するのかなどの詳細な検討が行われました。例えば、車が走るシーンではその場でインターネットから外国のコマーシャル動画などを参照して、こんな感じかと議論したり、犬を連れて散歩している人のシーンでは、若い女性で犬種はレトリバーに限るだろう、などと次々にコンテに具体案が書き込まれて行きました。

黒潮町プロモーション作品の絵コンテ

黒潮町プロモーション作品の絵コンテ

藤井講師によれば、一度、全体を通しての骨格がしっかりできれば、次にそこから枝葉をつけてバリエーションを増やしていくことは容易になるとのことです。また、四季を通じて撮りたいイメージを常に思い描いていることで、より明確な目的意識をもって映像のストックも行われていくことになります。

絵コンテができたら次はいよいよシーンの撮影で、今度は撮り方をめぐって現場では侃々諤々の議論になるそうで、そこまで行けばプロの領域への入り口だそうです。また、風景の撮り方のうまい人、動物が得意な人など、それぞれの撮り手の個性なども自ずと出てくるそうです。次回の作品づくりに向けて楽しみな段階になってきました。

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黒潮町ワークショップ:第7回

日 時:2011年2月8日(火) 13:40~16:00

場 所:黒潮町役場会議室

 

[プログラム]

13:40  WEB戦略の検討3
株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ高知支店 山本和明氏

 

WEB戦略の検討の第三回目となります。前回以降、宿題も含めて、「こういう人にこのサイトを見てほしい」というテーマとペルソナの設定が2案にまとまりました。A案は、「気楽なアラフォー」と名付けた、40代サラリーマン家庭で幼稚園から中学までの3人の子持ち、年収は夫婦で550万円という想定。このペルソナには、黒潮町のシーカヤック体験メニューをアピールしようというものです。B案は、「退職後の俳句大好きな夫婦」と名付けた、60代前後の退職夫婦で、西日本の都市部に住み、俳句の趣味を共有しているという設定です。この夫婦には、俳句とカツオで季節を楽しむという体験企画をアピールします。

シーカヤック体験PRページのサンプル1

シーカヤック体験PRページのサンプル1

今回の事前準備として、山本講師からプロのWEBデザイナーに、テーマ企画とペルソナとをセットにした仕様書を提示し、トップページデザインの作成を依頼し、それぞれ2通りのデザイン・サンプルを用意してもらいました(写真参照)。

ワークショップの最初の課題は、これらのサンプルが果たしてこれまで議論してきた自分たちのイメージと合致しているかどうかの検討です。もし、イメージと異なるとすれば、ペルソナの設定がデザイナーにうまく伝わっていないということになります。さいわい、皆で討議した結果、基本デザインには大きなズレはなかったようです。デザイナーが作成したキャッチコピーも、自分たちの思いをうまく表現してくれているとの評価もありました。

シーカヤック体験PRページのサンプル2

シーカヤック体験PRページのサンプル2

次の課題は、トップページから第二階層までのメニュー体系を想定した、サイトマップの作成です。普通のサイトでは第三階層くらいまでとなりますが、今回は時間の制約もあるので第二階層までとしました。「シーカヤック」チームと「俳句とカツオ」チームそれぞれサンプル1(写真)をベースデザインとして取り上げることにし、第二階層への入り口のボタンをどう配置するかも検討しました。

山本講師によると、これまで進めてきたテーマとペルソナをセットにした企画が「仕様書」という形で示されることが、WEB制作発注の基本とのことです。ところが、自治体などからの発注で、しばしばテーマ設定から丸投げというケースがあって、これには苦労させられるとのこと。つまり、もともと発注側に明確なイメージがまとまっていないため、サンプルデザインから先に進んだところで、上司のひとことで全くのやり直しとなることが多いというのです。

俳句とカツオ体験PRページのサンプル1

俳句とカツオ体験PRページのサンプル1

これまで一連のワークショップでは、グループ討論を通じてイメージの共有を図ってきましたから、発注側には大きなブレはありません。さらに今回、それが発注先のデザイナーに伝わっていることも確認されました。
あとは第二階層以下の詳細デザインとなりますが、ここで山本講師から、次のステージでは発注先のデザイナーとメールや電話などを通じて直接交渉を行うようにとの課題が提示されました。
いよいよ、WEB制作も最後の詰めの段階に入ってきましたが、山本講師によるトレーニングコースはこれで一段落となりました。

俳句とカツオ体験PRページのサンプル2

俳句とカツオ体験PRページのサンプル2

黒潮町ワークショップ:第8回

日 時:  2011年2月25日(金) 13:40~16:20

場 所:  黒潮町ビオスおおがた情報館内 砂浜美術館会議室

 

[プログラム]

13:50  話題提供-土佐西南大規模公園について
高知県土木部公園下水道課 北川尚課長

15:00  地域映像の発表/講評
メディアラグ株式会社代表取締役社長 藤井雅俊氏

 

地域映像制作の最終回となりますが、作品の発表に先立ち、高知県土木部の北川課長をゲストに招き、土佐西南大規模公園に関する行政としての管理指針などについて話題提供をしていただきました。
そのねらいは、これまでワークショップの中で浮上してきた黒潮町スマートグリッドタウン構想をより精緻に描くために、公園管理についての行政の基本計画や法制度上の縛りなどを学習しておこうということです。
土佐西南大規模公園が都市計画決定されたのは1972年のことで、当初の構想は海洋レクリエーション基地という、いかにも経済成長期の夢を反映したものでした。それが1982年のオイルショックにより見直しが図られ、1995年にはバブル崩壊後に見合った開発抑制型の現在の計画となってきました。いわば、レジャーランド化に乗り遅れたことで自然が保全され、それがこれからの時代の観光にふさわしい財産となったといえます。

地元プロモーションの核となるTシャツアート展

地元プロモーションの核となるTシャツアート展

公園の管理には都市公園法などで運用指針が定められていますが、新しい施設を公園内に設置する場合でも、それが公園の基本コンセプトに合致しているかどうかが行政的にはもっとも重要な判断基準になるとのことです。つまり、公園をスマートグリッドタウンのショールームとして位置づけていくことも十分に可能性があることが分かりました。

後半では、いよいよ黒潮町チームによる映像作品の試写会が行われました。最初に、住民ディレクターの上田さん、中平さん、埜下さんからそれぞれ制作、監督、編集に携わった際の意図などが語られ、次いで5分ほどの作品を皆で鑑賞しました。前回の絵コンテに忠実に、都会の生活に疲れた若者が黒潮町までドライブし、豊かな自然や人との出会いで癒されるというストーリー仕立てのプロモーションビデオとなっていました。

市民参加のイベント、シーサイドはだしマラソン

市民参加のイベント、シーサイドはだしマラソン

参加者全員からそれぞれに感想が語られましたが、ストーリーは分かった:けれど、説明的なカットが長いという意見もありました。これに対して、藤井講師からは、製作者はどうしても人に説明しすぎてしまう、それをあえてカットするクリエーターとしての勇気が必要というアドバイスがありました。また、撮影は主人公目線を意識したとの説明でしたが、それならばパンショットを用いるべきで、今回の絵では第三者目線になっているとの技術的なアドバイスもいただきました。シナリオ的には、主人公がドライブを思い立ったシーンから、いきなりキャンプファイアーで癒されるシーンに飛んで、その後に時間プロセスをたどるという倒叙法も視聴者の意識を「裏切る」手法としてインパクトがあるという説明もありました。
藤井講師の総括評として、素材としては黒潮の住人ならではの良いシーンをきちんとクリップしている。あとは編集技術なので、もう一度当初目標の3分に向けて作り直しをしてはどうかという提案をいただき、さらに挑戦を続けることになりました。

なお、今回のワークショップには、高知県土木部、黒潮町役場、砂浜美術館、工科大研究者など合計20名が参加しました。

グーグル・アースからも顕著な黒潮町の海岸線と松原

グーグル・アースからも顕著な黒潮町の海岸線と松原

黒潮町ワークショップ:第9回

日 時:  2011年3月22日(火) 10:00~16:00

場 所:  黒潮町あかつき館会議室

 

[プログラム]

10:00  講演 問題解決のためのICT機能の設計
高知工科大学地域連携機構 岡村健志助教

13:00  WEB戦略立案4
株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ四国支社高知支店・山本和明氏

 

 

黒潮町ワークショップの最終回となります。午前と午後の二部にわたって、黒潮町のあかつき館と工科大とをTV会議システムで結んで、講演と、WEB制作に関する仕上げの議論が行われました。参加者はコアメンバーを中心に、延べ11名でした。

午前の部では、工科大の岡村助教より、「問題解決のためのICT機能の設計」というテーマで、これまでとは少し視点を変えて、黒潮町の高齢者の見守り問題を例に、ロジックモデルの使い方とその有効性について解説しました。

あかつき館会議室にて

あかつき館会議室にて

実際に岡村助教が10名以上の健康・福祉関係者へのヒアリングを通して得られた意見やその背景となる状況から、重要と思われるキーワード、キーフレーズを抽出し、それらの因果関係などを考察して、問題構造の体系的な図式化から、施策の提案とその評価までのプロセスを描いたものです。健康・福祉の担当課からもその有効性は評価されています。

住民が困っていると話す「事象」とその背景にある「原因」とは必ずしも直結しているとは限りません。このような手法で課題の構造が見えてくることはあらたな気づきにつながり、施策を立てる上での指針となり、さらには施策を行った後の評価の視点ともなるということなのです。参加者からは、課題が整理できただけでも担当レベルでは役に立っているというコメントもありました。

WEB戦略の締めくくりの講義を行う山本氏

WEB戦略の締めくくりの講義を行う山本氏

午後の部では、山本講師の指導のもと、前回の仕様書にもとづくWEBデザイナーへの発注以降の、メールのやり取りによるデザイン修正などの経過を振り返って、当初の意図がどのように形に結び付いたのかを検証しました。
発注側の意図が必ずしもうまく伝わらなかったケースもあり、山本講師からは、修正を要求する場合にはこういう目的なのでこうしてほしいと、目的をはっきり示すことが重要だとのアドバイスがありました。

山本講師の全体まとめでは、あらためてホームページ作成以前の戦略の重要性が強調されました。
すなわち、観光戦略や地域の活性化戦略があってこそ、ホームページの役割や機能が導かれるのですが、今回はそのような戦略がない中で仮説的に目標を設定してきたところに限界がありました。これからは戦略そのものから考えを積み重ねていくことが大事ということです。

課題構造を図示するロジックモデルの例 (部分)

課題構造を図示するロジックモデルの例 (部分)

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