里山プロジェクトから里山工学へ

里山プロジェクトの現状

2014年度,高知県香美市佐岡中後入地区を対象に,社会システム工学教室における共通プロジェクトとして,里山の再構築に関する取り組みが始まった.

2015年度,大学院社会システム工学コース1年生を対象に実働部隊を組織.建築・土木・環境分野に関するテーマを設定して調査・研究を開始.研究成果は紀要にて発表.メンバーに高知新聞学芸部楠瀬さんが加わり,歴史に関するテーマも開始.

2015年紀要タイトル

・里山基盤科学技術の社会実装モデルプロジェクトの必要性(高木方隆)
・有用植物の自生地条件に関するネットワーク分析による適地群の抽出(古沢浩)
・木灰と消石灰のみを用いた舗装用コンクリートブロックの開発(大内雅博)
・香美市の中山間地域における古民家周辺の山林の状況(渡辺菊眞)
・香美市の中山間地域にある古民家周辺の聖地・葬地の現況(渡辺菊眞)
・デジタル写真測量およびGIS 技術を用いた山間部における作業道の計画作成(大内雅博)
・山間部における拠点とその周辺整備に向けた後入川の形状・流量調査報告(五艘隆志)
・高知県のある中山間地域における住宅の室内環境とエネルギー消費量の分析(田島昌樹)
・自然エネルギー利用による香美市の中山間地域における収容可能世帯数の推定(赤塚慎)
・近代農家建築の実測調査と改修のための課題(吉田晋)

 

2016年度,学長裁量費が採択され,古民家を購入し,改修に向けた取り組みを開始.一方で,金嶺神社の仮社殿を設置.その後,山車社殿を設置し,金嶺神社の建屋は解体.仮社殿はWorld Architecture CommunityのAwardを受賞.

2016年紀要タイトル

・プロジェクトの進捗(高木方隆)
・佐岡の原風景(今西隆男)
・香美市の過疎村落にある金嶺神社の再建プロジェクト(渡辺菊眞)
・地域交流を目指した古民家の改修計画(吉田晋)
・香美市の中山間地域にある古民家周辺の山林の現状と変遷(渡辺菊眞)
・金嶺神社周辺のボクセルモデル構築(赤塚慎)
・金嶺神社周辺地盤の安定性評価(大内雅博)
・後入川流域の利水現況の調査と活動拠点整備予定地における水利用検討(五艘隆志)
・佐岡プロジェクト 小水力発電サブプロジェクト(菊池豊)
・古民家の省エネルギー改修(田島昌樹)

 

2017年度,里山プロジェクトに関する科学研究費補助金等の外部資金を獲得.山車社殿がWorld Architecture CommunityのAwardを受賞.

基盤B「アグロフォレストリーのための統合ボクセルモデルの構築」 高木
基盤C「里山環境の人為的遷移の歴史分析ならびに野外実験にもとづく新里山創成」 渡辺
基盤C「地域特性を考慮した熱中症予防情報の提供に関する研究 」 赤塚
四国クリエイト協会「木灰を用いた地還型コンクリートの実用化」大内

新メンバーに堀澤先生が加わり,腐朽菌の分布状況と木材への影響に関する研究が開始.

 

里山プロジェクトの今後

2018~2019年は,獲得した外部資金に関係する成果が得られる見込みである.また,大学院社会システム工学コース1年生の活動は継続するため,成果はそれ以降も生み出される.

古民家の母屋は,現地活動の拠点としての利用が求められているため,早期実現を目指したい.納屋については,堀澤准教授による腐朽菌の研究フィールドとして活用しながら,改修を検討する.改修における資材は,出来るだけ周辺の山林から調達し,時間をかけて安い経費で実現し,古民家周辺を地域活動の拠点として利用したいと考えている.

現在佐岡地区では,地域振興推進協議会が地域振興計画を作成中である.その計画においては,高知工科大学との連携が求められていることから,本プロジェクトにおける社会実装の場が広がっていくと期待される.

旧佐岡小学校は現在,1階部分が佐岡コミュニティセンターとして活用されているだけで,それ以外は活用がなされていない.2階については,高知工科大学の教育・研究活動の拠点として活用したいと考えている.佐岡地区地域振興推進協議会が行った住民アンケートによると,高知工科大学の旧佐岡小学校の利用については,多くの理解が得られている結果であった.

 

里山工学への展開

現在,里山プロジェクトは,下図に示すように,自然科学と歴史民俗学との連携を実践している.学問的な体系が築ける状況にあることから,新たな学問分野として「里山工学」を立ち上げ,里山における土地利用のあり方や社会実装のあり方に関する方法論の確立を目指す.