プランツ・インキュベーション4

「プランツ・インキュベーションコース」:第4回

日 時:2012年2月26日(日) 13:00~16:00

場 所:高知県民文化ホール3F第3多目的室

講 師:ロギール・アウテンボーガルト/金 哲史

[プログラム]

①あいさつ/講師紹介,②第1部,③第2部,④第3部

講師:ロギール・アウテンボーガルト氏

講師:ロギール・アウテンボーガルト氏

【第1部】
講師(Lecturer):ロギール・アウテンボーガルトRogier Uitenboogaart (かみこや 代表)
内容:日本の伝統工芸と土地の材料
1. 大切な水
2. 植物と貿易–コットン-
3. 紙でつくる暮らし
4. 地域で育つ紙
【第2部】
講師(Lecturer):ロギール・アウテンボーガルトRogier Uitenboogaart (かみこや 代表)
内容:紙の歴史と和紙の原料
5. 植物を知る
6. 畑の美
7. 植物から学ぶ
【第3部】
講師(Lecturer):金 哲史(高知大学農学部 教授)
内容:農薬は危ないの?
1.植物の特徴
2.農薬の歴史
3.農薬とは
4.増える人口、減る耕作地
5.農薬はガンを引き起こすの?
6.農薬の安全基準
7.大量の農薬が漂う中での有機野菜の食事
8.それでも農薬は危ない–農家・副作用-
9.新しい農薬の創造を目指して–化学生態学は人類を救う–

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【受講者の感想】
○講義第1部の感想
第1部は和紙の匠ロギール・アウテンボーガルト先生の講義でした。今日の講義も和紙づくりから自然を見つめ直す内容でした。ロギールさんが暮らす梼原町は日本でも有名な四万十川の源流があります。和紙造りにとって水はとても大切な存在です。それは和紙だけでなく、私たちにとっても同じです。東北では放射能の問題で川での釣りが禁止されてきています。このプランツアカデミーでの授業でも習いましたが、山の恵みは少しずつ川へと集り濃縮されます。東北では結果的にこうした自然の循環が裏目にでました。この川から流れる放射能物質が、田園や、畑、公園の池に流れ込み、人が暮らす町を通って海に流れ着きます。当然その過程で、植物プランクトンや動物プランクトンから小魚に、小魚から小動物へ、そして大型の動物から我々人間まで徐々に濃縮された状態で届きます(食物連鎖‐生物濃縮)。そう思うととても怖い事だと思いました。体の大きな大人の人間には大きな問題では無いかもしれません。しかし、小さな生命の中で異形のモノが出てきたり、変異した子供が生まれれば社会的な不安は大きいです。
ロギールさんが語る、日本が誇るモノ造りの源流は今日問題視した自然との関わりを語らずにはいられません。話しの中でコットンと貿易の話しがありましたが、今回の原発問題で日本のクラフト製品にも大きな打撃があっただろうと感じました。

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○講義第2部の感想 第一部で語られた、モノ造りと自然と貿易が発展する為に、私たちがいつも大切にしないといけないことがあります。それは植物について深く知る事です。同じ植物でも気候や周りの環境が違えば同じものはできないからです。そう思うとなぜか、自然を相手にしたモノ造りは、武士道に通じるような清さと迫力を感じます。それはきっと、材料から育て、形にするという一環したサイクルに現代に無い“永久”につづく力強さを感じるからです。それは、モノという形を与えられる前の「畑」にも感じられます。授業の中でみた畑の写真は美しく、そうした畑から学び、いいモノ造りが生まれるのだそうです。そうした美学は格好いいと思います。私の場合、モノ造りとまでは行きませんが、自分が食べる食べ物くらいは自分の美学に徹するものを自らつくってみたいと、今日のロギール先生の講義を聞いて思いました。

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○講義第3部の感想
第3部は高知大学農学部の金 哲史教授の講義でした。講義の冒頭では、マダガスカル沖のモーリシャス島に生息していた絶滅鳥類ドードー(Dodo)の話しを聞きました。人間に発見されてからドードーは、人間による捕獲以外に、人間が持ち込んだイヌやブタ、ネズミによる雛や卵の捕食が原因で、わずか180年で絶滅しました。この事実は私たちとっても衝撃的でした。生態系を維持することの大切さを伝える様々な場面で語られるだけでなく、「不思議の国のアリス」や「ドラゴンクエスト」「ポケットモンスター」「ハリー・ポッター」といった子供たちが聞き、見る物の多くに題材として扱われその知名度と、我々自身の行いについて考えさせられるきっかけを作っています。余談ですが、ドードーについて調べてみると、単にドードーと呼ぶ場合は、モーリシャスドードーを指し、モーリシャスドードーが属すドードー科には他に2種、レユニオンドードー、ロドリゲスドードーがあり、いずれも絶滅しています。このドードーのヒストリーから、固有種の絶滅は思っている以上に些細な原因で起きていることが分ります。それがもし、私たちが食べている食べ物を作る過程で生まれていたらどうでしょう?そう考えた時に気になるのは、生産過程で様々な生物を死に至らしめている薬、農薬の存在です。今日の講義ではこの「農薬の安全性」について学びました。

講師:金哲史高知大学教授

講師:金哲史高知大学教授

まず、結論から述べると「農薬は今を生きる我々にとっては安全であり、これから生まれる次の世代については保証できない、また生産者にとっては大変危険な劇物」です。それはなぜか、順に説明して頂きました。まずはその前に、化学的に物事を考えることの大切さについて大変面白いお話を聞きました。最初は狂牛病についてのお話です。アメリカの牛の飼育数は約3,500万頭です。過去10年間でアメリカ産の牛の狂牛病になったのは3例で1人死亡しています。死ぬ確率は120億分の1の確率で100年にたった1人ですが、アメリカに日本は全頭検査しなさいと言っています。1頭検査するのに2000円掛り、それを10年間続けると20兆円もの費用がかかります。日本では交通事故で年間6000人死亡していますが、自殺で年間3万人も死亡しています。検査をして何兆ものお金を失うよりは、自殺する人に支援金を与えたら死ぬ人はどれだけいなくなるでしょう?こういうことを化学的に考えて行くのが化学生態学という学問です。

癌についての認識の仕方も間違った考えが蔓延しています。主婦は癌の原因として食品添加物、農薬、喫煙などをあげていますが、癌の医学者が考える癌の原因は、1番に食事をあげています。それは、年を重ねるごとにたくさん食事をしているからです。私たちの体に人工化学物質は1日0.1mg取り込まれています。一方、植物起源の有毒物質は1日に1.5g取り込みます。植物起源の有毒物質は食事をすることによって摂取し、1日1日人は癌になる確率を高くしているのです。とても衝撃的な話しでした。なぜそうなるのでしょう?
植物の特徴は、一言で言うと「動けない」ということです。だからこそ、トゲを持ったり、皮膚を硬くしたり、ワサビや菜の花のように刺激物質を蓄えたり、虫の嫌がる物質を蓄えて身を守っています。これが農薬の原点であり、アコニチン(トリカブトの毒)や、発がん性のある成分を持つ化学的な防御方法です。農業はその植物が本来もつ牙を抜き、育てやすくしています。牙の抜かれた植物は当然、昆虫達の標的となり集ります。そこで農薬を使うという非常に不自然な、悪循環が繰り返されています。しかし一方で地球の人口は70億人を突破し、誰もが口にする野菜を作ろうと思ったら、農薬なしでは食べて行けず、農薬のない暮らしは考えられないのでは無いかと思われる状態です。

農薬の安全基準では、急性毒性、慢性毒性、次世代に及ぼす影響(繁殖能力や催奇性)、生体機能に及ぼす影響などを調べなければなりません。唯一医薬品と食品添加物、農薬などは調べられています。みなさんはこういうハンカチなどについている化学繊維は気にならないのに、農薬は気になる、野菜に対してはとても神経質に言われています。しかし、農薬はあらゆるところで使われています。例えば、抗菌グッズや抗ダニ加工、におわない防虫剤などの商品は、だだ農薬を塗っているだけです。農家の人が農薬を使うと農薬取締法にひっかかりますが、一般の家庭で使うのは許されています。今日の講義を聞くまでまったく知りませんでした。そして、個々の化合物の活性の評価は現在、可能ですが、複合作用については全くわからないそうです。また、濃縮された場合は当然危険です。今の社会では農薬は不可欠になっているかも知れません。だからこそ、生物のことをもっと深く突き詰め、農薬を希釈し、不必要な使用を抑えて行く事が大切だと学びました。