地域ITS 社会研究室

【室長 熊谷靖彦教授 平成27年度より地域公共交通研究室と統合し、交通基盤研究室に改称】

ITSによって、地域に根ざした交通問題の解決を図る

地方でこそ必要性の高いI TS技術

ITS(Intelligent Transport Systems)とは、最先端の情報通信技術を用いて交通事故、渋滞などといった道路交通問題の解決を目的に構築する新しい交通システムである(例:高速道路のETCやVICSによる渋滞情報の提供etc.)。その事業効果は50兆円とも試算され、今、国をはじめ情報通信、土木建設、自動車など幅広い産業分野から大きな関心が寄せられている。
しかしITSの現状には幾つかの問題点がある。その一つは、ITSの青写真が中央主導で引かれ、地域の実情に必ずしもそぐわないケースが生じている点だ。ITSが「安全性の向上」「輸送効率の向上」「快適性の向上」「環境の改善」「新たな産業の創出」という所期の目標を達成し、真に心豊かな交通社会と地域社会の実現に寄与するためには、地域に密着し地域のニーズに応えられる、地域の人による地域のための地域ITS、すなわち“草の根ITS”という理念と、それを具体化する活動が不可欠なのである。

“地域ITSのメッカ”をめざして

「交通事故や渋滞、歩行者の利便性向上、自然災害や環境悪化、物流の効率化など、地域が抱える固有の道路交通問題に対し、最新の電子通信技術を駆使したシステム導入による向上・改善を図り、地域住民の要望に応えることによって、地域の活性化に寄与する」ことを目的に設立された地域ITS社会研究室では、以下の「八策」を策定し、活動を展開している。
1.高知に根付く有益なるITSを複数件(10件)導入
2.草の根ITS係数の提案
3.研究室卒業の専門家の育成
4.ITS Distance Learning(e-Learning)の国内および国際版の開講
5.安定的な受託の実現
6.Made-in Kochiの全国版地域ITSの発信
7.地域ITS Plat-Formの充実
8.活発な国際活動

研究成果

これまで以下の6システムが実用化されている。特にゆずりあいロード支援システムは「Made-in-Kochi」のシステムとして平成25年度末時点で6県(徳島、愛媛、岡山、島根、大分、静岡)で導入が始まっている。(カッコ内数字は25年度末時点の導入箇所数)
1.ゆずりあいロード支援システム(67)
2.道路情報板KLシリーズ(34)
3.ノーガード電停対策(8)
4.トンネル内歩行者ITS(1)
5.地域差を考慮したジレンマ制御(1)
6.Chi-Bus(1)

研究室長から

これまでのITSの歩みは中央主導で、ややもすると技術先行、Seeds志向の傾向がありました。そのため、実用化をめざしながら実証実験に終わる例も少なくなく、「本当に役に立つITS」という点で問題を残していました。社会システムの一つであるITSは、本来、Seeds先行ではなく現実に存在する Needsから出発すべきあり、拠って立つ場所はNeedsが実際に存在する「地域」である―。これが「地域ITS」の原点です。東京や大阪にない、地域固有の、しかし切実な道路交通問題を掘り起こし、解決するために、我々はモットーとも言うべき行動方針の下、活動を展開しています。それは以下の2つです。
1.草の根ITSの実現
2.Think Globally and Act Regionally