香美市の中山間地域にある古民家周辺の聖地・葬地の現況

高知工科大学紀要 第13 巻1号 2016.7.29 より

渡辺菊眞, 大森剛志

要約 本稿は、香美市の中山間地域に立地する、空き家となった古民家周辺の山林にある聖地と葬地の現況を明らかにすることを目的としている。聖地は同地の生活を精神的に支えて来た神社や祠、葬地は同地の先祖の霊を祀る墓地を指す。かつて中山間地域においては、家屋とその周辺の山林は密接な関係を築いてきた。山林は資材・食料等の生活資源を提供してくれる場であり、豊かな恵みをもたらしてくれる存在であった。それゆえに山林を畏敬する念が生まれ、神社や祠などの聖地や、墓石を設置する葬地が営まれてきたのである。山林は生活の物質的支えであるとともに精神的支えでもあった。しかし、近年の過疎化に伴い、管理されない森林、耕作放棄農地が増加を続け、山林は荒廃の一途を辿り、同時に聖地、葬地を巡る環境も荒廃しつつある。本稿では里山の再生という目標に向け、対象山林の中に分布する聖地・葬地の現況を明らかにする。精神的支えとしての里山の再生への基礎的考察と位置づける。

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