高知工科大学紀要 第14巻1号 2017.8.31 より

大道直紀, 国分将吾, 嶋田祐典, 渡辺菊眞
要約 本稿は、香美市の中山間地域に立地する古民家周辺の山林の現況と、1970 年代から現在までの空間変遷を明らかにすることを目的としている。かつて中山間地域においては、家屋とその周辺の山林は密接な関係を築いてきた。山林は資材・食料等の生活資源を提供してくれる場であり、家屋と山林の織りなす情景は日本風景美の原型のひとつでもあった。しかし、近年の過疎化に伴い、管理されない森林、耕作放棄農地が増加を続け、山林は荒廃の一途を辿っている。本稿では高知県香美市にある古民家周辺の里山の新たな創成に向け、かつて対象地域周辺が山林と密接な関係を築いていた最後の時期である 1970 年代から現在までの変遷を明らかにする。また、変遷が大きな地域を重点地区と指定し、より詳しい変遷過程を空間と生活容態の双方について明らかにする。今後の里山整備指針の手がかりをうるための基礎的考察と位置づけている。