里山工学の方法論

高知工科大学紀要 第15巻1号 2018.7.31 より

高木方隆, 久須美雅昭

要約 現在、日本の里山の多くは人口減少により荒廃の一途をたどっている。里山工学は、里山を再生させるための学術体系の一つである。その中で重要な役割を果たす空間情報システムと自然環境予測シミュレーションは、適切な再生プランを策定するツールとなる。本稿では、高知工科大学から新たに始まった「里山工学」について、その発足の経緯を紹介する。
学術の中核となるべき固有の方法論について、2009(平成 21)年の地域連携機構の発足時点にまで遡り、数次にわたる共同研究プロジェクトを通して空間情報システムが徐々に中心的な役割を担うようになってきた過程を記述する。この過程には ICT や IoT をはじめとする様々な工学技術の進歩も反映されている。
また、既存の学術領域との比較で里山工学の特徴を論ずる。すなわち、農業工学、土木工学、生態工学などの工学分野や、環境学、里山学などの里山研究を包摂するような分野があるが、里山工学は、方法論の固有性、現場の課題解決に向けた実践性において独自の新領域を拓くものである。

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