高知工科大学紀要 第17巻1号 2020.12.15 より

高木方隆, 久須美雅昭
要約 2017(平成 29)年に高知工科大学有志研究者らによって里山工学が旗揚げされた。当初、GISの地理空間上に自然系、人文社会系を問わず多様なデータを蓄積し解析することを中核方法論とした。大学近郊の実証フィールドでの調査を進める中で、植物分布の地理的プロファイリングというGIS 二次元地図平面上の考察から、上空、地中も含めた三次元ボクセル空間における森林植物生態の考察へと進展した。さらに、歴史・民俗の研究者も加わり、古文書調査、遺跡・遺構・遺物調査、古老への聞き取り調査などから里山における人の暮らしを復元的に解明する歴史民俗 GIS 研究が始まった。データ蓄積の進捗に伴い、ボクセルモデルは対象物に応じた階層構造となることからボクセルシステムというコンセプトに至った。ボクセルシステムでは民俗などの地域境界が曖昧な事象には確率グラデーション表現で自然科学データとの重ね合わせが可能となる。ボクセルシステムによる事前予測と事後評価を基盤とすることで様々な工学分野が里山工学と結びつく。さらに里山工学は生態学との親和性というこれまでの工学とは異なる性格を持つ。