有用植物の自生地条件に関する ネットワーク分析による適地群の抽出

高知工科大学紀要 第13 巻1号 2016.7.29 より

古沢 浩, 臼井良介, 高木方隆, 渡邊高志

要約 四国全域での植物インベントリにより得られた有用植物の自生地分布について、地理情報システム(GIS)を用いた解析を行う際に直面する課題として、空間相関以外の属性値(環境条件)相関をどのように可視化するかという点がある。本研究では、GIS 解析と相補的な新しい解析手法の確立を目指して、2 地点間の相関関数を新たに定義し、その相関値をネットワーク図として表現した。これにより、栽培化に必要な適地群条件の抽出が実現できたので報告する。具体的には、ここ数年間の植物インベントリで採取された自生植物の採取地点 536 のうち、97 地点で採取されたウバユリについて検討を行った。97 地点に関する 2 地点間の属性値相関をネットワーク図として表現した結果、類似度が高い自生地コミュニティー(適地群)が、四国には二箇所存在することがわかった。苛酷環境条件の適地群が抽出された一方で、栽培が容易な穏和環境の適地群も抽出できた。後者の条件は、「降水量が高知県平均値程度、傾斜方位が南向きで傾斜角度が緩やかな平地、植生境界線や水辺からの距離が近い場所」であり、本プロジェクトの想定フィールドである佐岡地区がウバユリの栽培適地であることを示唆している。

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