高知工科大学紀要 第16巻1号 2019.7.31 より

渡辺菊眞, 楠瀬慶太, 大西悠, 岡崎廉, 三島宏太
要約 本稿は、高知県土佐山田町佐岡地区中後入の空間的特質を明らかにすることを目的としている。空間的特質とは地形の特徴、集落内の空間要素(街路、水路、居住地、聖地・葬地)の分布や方位など、対象領域における空間要素の各種特徴と、それらを総合することで把握できる空間の成り立ちを言う。佐岡地区中後入は香美市の平野部と山間部の境界に位置し、谷と尾根が東西方向に交互に連続する地形上に立地する。この複雑な地形の南には本村が、北には大後入、有谷、佐竹が接している。それゆえ一つの谷、尾根の全てを占有できるわけではなく、谷・尾根の一部は他の集落の土地となる。また、中後入には 3 つの小集落(西ノ谷、中ノ谷、東ノ谷)があり、それぞれが位置する地形や他集落との隣接関係が異なる。地形や他集落との隣接関係の違いが、空間的特質の差異を生み出すことが考えられる。本稿では複雑な地形や他集落との隣接関係の中で、中後入の集落空間全体がいかに形成されているかを空間構成図式として示すとともに、小集落ごとの空間構成や小集落間の関係についても空間構成図式として示す。中後入の空間的特質に対する一考察としたい。