佐岡の原風景

高知工科大学紀要 第14巻1号 2017.8.31 より

今西隆男

要約 佐岡地区では、昭和 35 年からの 55 年間に人口は半数以下にまで減少しているが、世帯数の減少は 10 %程度で、1 世帯当たりの家族数が半減し、高齢化や独居世帯の増加が進み、子供の数の減少が著しい。昭和 30 年頃の佐岡では、家庭には車やガス、石油は殆どなく、不便な生活であったが、田畑を耕すとともに桑や果樹を栽培、農閑期には植林の手入れを行い、家畜を飼って農林地を効率よく活用して生活していた。子供は山や川で遊び、自然の中で多くの事を学んでいった。山村には貧しいながらも、多くの若者が暮らし、心豊かな時代であった。しかしながら、高度成長期以降、一極集中化が進み、過疎化・高齢化、生活様式や産業構造の変化等によって、農地への植林や耕作放棄地が増加し、以前の面影を見ることはできなくなってしまった。現在進行中の佐岡プロジェクトには、里山社会を再生し、忘れ去られようとしている「佐岡の原風景」を取り戻すことが期待されている。

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