プロジェクトの進捗

高知工科大学紀要 第14巻1号 2017.8.31 より

高木方隆, 渡辺菊眞, 吉田 晋, 大内雅博, 五艘隆志

要約 過疎化が著しい中山間地域においては、各自治体は十分なインフラを整備できない状況である。現代は科学技術が発達し、安価な機器で自然環境を詳細に把握したり、効率良い自然資源の利用も可能となってきた。本プロジェクトは香美市土佐山田町佐岡地区を対象とし、科学的な予測手法により安全で安心できる暮らし方の提案を目標としている。現在様々なサブプロジェクトが立ち上がっているが、本報告では、金峯神社の再建、古民家の改修、農林地の調査、斜面の安定解析、河川の観測を取り上げる。
金峯神社の仮社殿は、材料費 30 万円のコストで、学生たちによる施工により建設した。他の中山間地域においても老朽化している社殿は多いが、その再建手段の方向性を示すことができた。古民家の改修については、プロジェクト活動、学生の課外活動に加えて、地域の方々との連携の拠点としての機能を持たせる提案ができた。今後耐震性能を上げつつ、安価な改修設計が課題となっている。対象地域周辺の農林地については、航空写真による算定の結果、桑畑から人工林へと土地利用が変化し、農地の面積が 1/2 になり林地の面積が 2 倍となっていた、今後は自然の力を最大限に利用し、資金や労力を抑えた有用植物の栽培に向け、調査・計測を行っていく。斜面の安定性については、地上からのレーザー計測、空中からの UAV 計測により、樹木の三次元構造を含む斜面形状のボクセルモデルを構築した。斜面安定解析の結果は、安全率が 2.0 を越えていた。今後は土質定数の再検討が必要とされた。河川については、安価な気象・水文観測機器を設置し、河川に関する観測データを収集した。今後は対象地域の流出状況をシミュレートし、河川防災指針を策定する予定である。

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